未来兵器AS アーカイヴス

巻頭言

Advanced-Shape……その脅威

Advanced(進化した)Shape(姿形)の兵器たち……それがバランギ帝国の兵士たちが操る異形の戦闘兵器である。

世界を支配する二大超大国によって仕組まれた二十世紀末の「11年戦争」。その当事国は50年に及ぶ非武装化、という極端な解決法に追い込まれる。しかし、その軍事的に空白の筈だった半世紀の間にバランギ帝国をはじめとする国々は秘密裏に常識を覆す超兵器を開発し、次なる戦争に備えていたのだ。装甲車、戦車、巨大輸送機、巨大爆撃機、都市攻撃用レールガン自走砲、人型兵器、そして人間の脳を組み込んだ生体兵器。まずはその姿かたちで敵軍の度肝を抜き、超絶的な威力、性能で圧倒する。Advanced-Shapeはそういった殺戮兵器の一族の総称である。そして、それはもしかしたら「進化」し、姿かたちを変えた人類そのものの、次なる、未来の姿かもしれないのだ。

悠久の歴史の中、戦い続ける事によって進歩し、自らの在り方も変えてきた人類という種。地球に生まれた鬼子の如き生物が進むのはいかなる段階なのか?

3年の悪夢

汲めども尽きぬかのような鬼謀の才を持つクリエーター、小林誠の発想と技術は「近代兵器」の枠組みを軽く超えたデザインの兵器群を次々に生み出してゆく。ある時は既存のプラスティックモデルのパーツから、またある時はその手になじんだエポキシパテやプラ材から、異形の、悪魔的な造形物としての兵器が我々の目の前に現れる。兵器にして芸術的造形物。ある時にはそれは「兵器」の既存概念から遠く離れた、「悪魔の子宮から生み出された、『火と鉄の文明』を父に、『血と怨念の呪術』を母とした混血児」を思わせる怪物として出現する。

「悪魔使い」小林誠の、異次元を旅する頭脳と指先は、あの『AS』の3年間を憶えている我々に、あの頃の夢を、栄光と悲惨と不可思議に満ちた悪夢を今でも見せてくれる。偉大なるかな、3年の、かくも長き悪夢の日々。あの快楽のナイトメアを、機械の女神リュウの哀しくも凛々しい戦いの歌声を、今こそすべての人々の目は、脳髄は、味わうべきなのだ。

 

2008年8月23日記                   主宰者  蘭亭紅男

 

クリエーター小林誠

1980年代半ば、『ハイパーウェポン 未来の超兵器』(モデルアート社)で本格プロデビューしたマルチクリエーター小林誠。彼の才能はSFデザイン、映像表現の新たなムーブメントに飢えていた人々を魅了した。『機動戦士ガンダムZZ』、自らのオリジナル作品『ドラゴンズへヴン』『迷宮都市』などを経て、1988年、それまでのメカバトル作品の集大成とも言える『未来兵器AS』が「ホビージャパン」誌上で展開される。「ホビージャパン」編集部によるオリジナルストーリー、小林誠によるデザインと造形。「世紀末」という当時の流行語を体現したかのような怒涛のインパクトが読者を襲った。

時あたかもバブル経済期。うたかたの夢に酔いしれる多数の日本人たちをよそに、ベルリンの壁とソ連の崩壊、サダム・フセイン独裁支配下のイラク対、米英を中心とする西欧列強諸国の対立がやがて湾岸戦争へと結びつこうとする、旧秩序の崩壊と、新世界秩序の建設の足音は間近に迫っていたのである。

『未来兵器AS』の物語こそは、イラン・イラク戦争、ソ連のアフガニスタン侵攻を思わせる、砂塵と荒野を舞台に、傭兵たちがスーパーウェポンを駆って果てしなき破壊の待つ、人類未踏の戦場、人類史の未来そのものの中へ身を投じる、暗黒の未来を預言するかの如き黙示録なのだ。

凡例

「前文」

主に「ホビージャパン」誌連載1ページ目に掲げてあるナレーション的説明文。

「オリジナルストーリー」

「ホビージャパン」誌掲載の文章ストーリー部分を転載した文章。テキスト不備などで不完全な部分があり、以下の「オリジナルストーリー全文」とは区別する。

「オリジナルストーリー全文」

「ホビージャパン」誌掲載の文章ストーリー部分を全て転載した文章。

協力

Desicive Arm

ZETTON

そして、『未来兵器AS』 『AS WARS』を我々に与えてくれた小林誠氏、発表当時の「ホビージャパン」誌関係者諸氏に限りない感謝をここに表します。

我らはここに、あの地球上における人類最後の戦いを再現する。

2008917日      ASアーカイヴス委員会

「オリジナルモデル」

ホビージャパン誌(1987〜1990年)に掲載、物語に使用された小林誠氏製作の模型。

(当サイトに使用した図版は蘭亭戦闘メカ研究所、蘭亭紅男他が作成したもので、『AS』連載当時のものではありません)

第一部

関東軍栄光の進撃

第1話『地平線の彼方へ』

「原典」

ホビージャパン誌198712月号〜199012月号までに掲載された『未来兵器As』『As Wars』内の作品(造形作品、絵、文章)。

当サイトの図版を許可なく複製、使用することはご遠慮ください。

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