タイコンデロガ

「強行着陸母艦」(於『As』)

「軍用シャトル」(於『ハイパーウェポン2 地球戦線』)

ワンフェス2010冬、販売時「ボックスアート」

ワンフェスに申請する時に『ハイパーウェポン2 地球戦線』からの出典、として出したのだが……

『未来兵器As』(As Wars)にも登場している。ここで説明すると、ワンダーフェスティバル2010冬に版権申請する際に出展するアイテムを選ぶ基準というか条件が自分なりにあった。

1、『As』関係

2、作者たる小林誠自身しか今までに立体化していないアイテム、キャラクター

3、または小林誠自身も立体化していないアイテム、キャラクター

といった基準から「日立入道(機動戦車ブラス)」「タイコンデロガ」「ナイトファイター」「ダキュア」の4点を選んだ。「ダキュア」は3に、他の3点は1と2に該当すると思われる(以上、あらゆる情報を調べた訳ではないので「これらのキャラを作った人はもっと居る」といった間違いはあるかもしれないが)。「シャイアン」や「ネオジオ」といった有名どころはこれまでに数多くの人が立体化しているので避けたのである。

どうしてあまりこの辺りのメカは作る人がなかなかいないのだろうか、と思ったりするが、タイコンデロガというのは曲面のバケモノのような存在で、形の捉え方が難しく見えるのかもしれない。かくいう自分も「この部分はこの形でいいはず!」と思って造形し、後で写真をよくよく見たら全然違う形だった、ということもあった。

最初期の「図面」

「タイコンデロガ」「ナイトファイター」の二つを選んだのは(『As』ではなく『ハイパーウェポン』で申請を出したのは)、『As』では版権が下りなくても『ハイパー』なら下りる可能性はある筈!という思惑があったからでもある。

「日立入道」の所でも書いたが、『As』関連アイテムに果たして版権が下りるかどうかは推測不能だった。というより、かつて「Asアーカイヴス」を始めるにあたってホビージャパンに一応の連絡を、と一報を送ったら「過去の図版等の使用許可は当社は出しておりません。ご了承ください」との返事が返ってきてしまい、『As』で商売をする、というのは不可能っぽい、というのが私自身に実感としてあったのである。だから、タイコンデロガとナイトファイターは『As』にも登場するが、とりあえず『ハイパー』で申請しておいた方が安全、という判断で、それは作戦として見事に上手く行ったことにはなる。そもそも『As』をもっと世間に広めようぜ!という思惑がワンフェス参加の主要な動機だったので、『As』で申請したい、というのが私の本音であった。が、現実の壁というものはある。

造船で言えばキールを据えて骨組みを作り始めた状態?のタイコンデロガ

タイコンデロガだが、作っていた当時は「なかなか似ているじゃないか」と自分では思っていたのだが、後から原典の「ハイパーウェポン2」の写真をよく見ると、色々な所が違っているのがわかってしまったのである。

部分によっては作者の小林誠先生自身のチェックによって、思いもかけない造形上の間違いが明らかになったりしている。左右船体・エンジンブロックの断面形などがそうである。私はずっと昔からこの部分の断面形は5角形だと思っていた。ところが大部分の造形が終了した後に小林誠先生に伺ったところによると、この部分の断面形は6角だ、という話なのである。修正すると不正確さが目立ったり、他の部分とのバランスの崩れが生じる恐れがあったので最後まで修正はしなかったのだが、今後またタイコンデロガを作ることがあったらこれは絶対に踏まえておかなければならないことである。

後からの写真。エンジンブロック断面形を五角形にしてあるが、原典は六角。

工作は基本的にあらゆる造形物と同じく、「骨組みを作り、徐々に部分を整え、ディティールを増やしてゆく」というやりかたである。左右エンジンブロックとその間にある船体はプラ板箱組。曲線で構成された艦首などは、加熱して変形させたランナーを骨組みにして形を作っていった。骨組みの上からプラ板の細切れを貼り付けて外装を形成。曲がりくねったパイプが外装板の下を蛇行しているかのような、艦首の特徴的なディティールはやはりランナーを加工して形作ってゆく。しかる後にタミヤパテを盛り、乾燥させて削る、磨く、というやり方で形にしている。

タミヤパテをあらゆる部分に盛る

普通こういう大きな曲面、外装部分はエポキシパテを使うものなのだろうが、エポパテはどうしてもラッカー系パテよりプラへの食い付きが悪く、工作中にうっかり触って剥がれてしまう、また、プラに密着させようと四苦八苦している内にベタベタと指の方に密着して形を整えるどころの話ではなくなってしまう、ということも多い。その点、タミヤパテのようなラッカー系はヒケが生じて最終的な仕上げが手間がかかって大変なのだが、食い付きの良さ、という点、また磨いた後の金属にも似た艶が私は好きで、ついタミヤパテを使いたがるのである。

艦首の延長。赤線部分で切断、緑線の辺りまで延長する。これで寸詰まり感をなくした。

艦首は一度完成近くなった段階で、「長さが足りない!」ということに気づいてしまった(まあ、イメージの問題かもしれないが)。悩んだ末、一度、艦首先端から23pくらいの中間地点に鋸を入れて切断、3ミリプラ角材積層スペーサーを18ミリほど噛ませて艦首を延長した。そもそも図面も写真を元に正確に引いたりはしておらず、あくまで自分のイメージで方眼紙の上に絵を描いているようなやり方なので、「自分のイメージ」というより「自分の思い込み」を最優先して作っているようなものなのである。だから、事あるごとにオリジナルとの齟齬が生じてくる。

艦首同様、悩まねばならなかったのは斜め前・下方という絶妙な方向に向いている前部ノズルである。これは前述の、ランナーの骨組みに合わせて微妙に角度を少しずつ変えながら細かいプラ板を貼り付けてゆく、という方法で作っているが、都合2回作り直している。ノズルの角度と大きさが何度やっても間違っているように思われて、今も実は100パーセント満足のいく角度、大きさではない。最初はバランス的に小さくなってしまい、その上から何枚もプラ板とタミヤパテを重ねていっているので、もし現存している原型のこの部分を鋸で切って内部を見たらその試行錯誤の痕というか、形作るのに悩みまくった証拠が出てくるであろう。

更に問題だったのは最後部エンジンノズルを囲んでいる可変フィンである。普通、模型的・ガレージキット原型的にはフィン一枚一枚を別パーツにして、シリコン型製作・レジン複製の際も一枚ずつ別パーツとして製作するであろう。しかし、私はレジンキットにおいて部品数が増えるのが嫌いなのである。ただでさえ(大手メーカーのプラモデルならほとんど必要無い)パーツ成形に時間と神経の集中が必要で、素材的に接着しにくく、組みにくい、手間のかかるレジンキットなのに、いたずらに部品を増やしていいものだろうか?せっかく買ってくれるお客さんが居ても、組みにくかったら組み立てもせずに押し入れに放り込んでしまうのではないだろうか?私はそう思う人間なので、「ディティールを維持しつつ、部品数は抑える」という信条でガレージキットの構想は行っている。第一、自分が「パーツ数が多いだけのガレージキットなどは組むのが大変なので絶対買わない」という人間なので、その辺、「買う側の感覚」を重視したい部分なのである。

そういう理由で、後部ノズルの形は4枚のフィンで形成されているデザインだが、あえて4枚のフィンをひとまとめに、1パーツ構成にしたのである。これで型から一発で抜くことが出来、組み立てもフィン一枚一枚の角度を決めるのに神経を擦り減らさずに済む筈なのである。あくまで一枚一枚別パーツに見えるように、という精度にこだわる方は接続部を削り込む、塗装の際に陰影のつけ方に気を使って塗る、等の作業を重ねていただければ良い。小さいサイズでもあり、この部分は1パーツ構成の処理状態でそれほどおかしくは見えない筈である。

艦底に接続している球形のポッドは原典と接続の形が違ってしまっている。原典ではパイロンのような接続部分は存在せず、もっと艦体そのものと一体化している。これも私の不正確でイラスト的な図面により、製作中に脳内イメージが変わってしまった部分である。

真上、真下から見た写真などは原典の「ハイパーウェポン2」にも載っていないので全体形を掴むのに苦労したが、対照的にノズル周辺、艦首などの各部の細かいディティールについては白黒写真とは言え公表されていたのでかなり参考になった。とは言え、艦首など製作中は写真を見ながら、かなり気合を入れてプラ板の細切れや伸ばしランナーを貼り付けてディティールを入れたつもりでいたが、今見るとオリジナルに比べて全然足りない感じもする。ノズル部は艦首よりは「縮尺模型」的に上手く処理したように思っているが。

最終的にはエンジンブロック後部と艦首先端近くには、薄く盛りつけたエポキシパテにアートナイフの刃先を押しつけて更に細かいメカディティールを入れようと努力してはいる。

塗装は全面にタミヤ・スーパーサーフェイサーを吹いた後、シャドウ部分に缶スプレーで黒を吹く。タミヤエナメルの青、白等を筆塗りした後、確か缶スプレーで帝国海軍軍艦色を吹いたと思う。更にその上からまたエナメルの白を薄めて部分的に筆塗り、最後にエナメルの黒、茶で汚しを入れた。オリジナルの写真の雰囲気に近づけるために試行錯誤、重ね塗りの連続だった、という記憶がある。

ともかく、これはワンフェス当日に、サイン会場に小林誠先生に挨拶に行った時にも言われたが、「とにかく磨け!型作り直前、スケジュールギリギリまで磨け!」ということを先生には繰り返し言われた気がする作品である。ワンフェスの数か月前に一度型を作って、本体に関してはほぼ完成したような気持ちで居たから、「それじゃ売る側の態度として失礼だろ!」と先生としては思ったのだろう。そういう意味でも忘れるわけにはいかない艦である。

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