第4話 『天敵再び…』
オリジナルストーリー
国境警備のため我々は11年戦争の交戦国「ガザール共和国」に近いミケーレに入っていた。
「隊長、ポイント11−56に進入車両を発見」
大型移動観測機に乗っていた乗員が侵入者のデータを集めた。
「出ました。これです」
「この兵士2人の他に写っているのは何だ」
「データ不足なのではっきりとは言えませんが…」
「ちょっとまて、何かで見たことがあるぞ」
私はある科学専門誌に「ガザールの軍事力」と題された記事の中で「ガザール軍は身長3〜5m(1.65〜2.75ケーン)のサイボーグ兵士を各部隊に配属させている」と書かれた文章のわきに全身の想像図が掲載されていたのを思い出していた。
形式名SPISEとされたそのサイボーグにはちゃんと2本の脚があったが、今我々の前に近づいてくるそれには足の代わりに走行ユニットらしき4つのタイヤが付いていた。
バランギ軍の大型ホバータンク「ザン・ジオ」。
2連装短射程105ミリ砲を備える。
「隊長、どうします」
「しばらく様子を見よう。おそらく彼らの目的は攻撃ではないと思うんだが…」
「それにしても3ケーン近くもある兵士が自在に動き回るには走行ユニットにしないと無理なんでしょうか?」
「おそらくそうだろうな。そういった意味から考えると、我々の開発したサイバーヘッドのほうが上かもしれんな…」
「隊長、サイボーグ兵だけが単独で行動を始めました!」
「手に持っている武器は?」
「新型のレーザーカノンです…」
「第2級の警戒態勢をとれ!」
ガザール共和国軍の新兵器、サイボーグ兵「ランゼロックスT」。
ガザール共和国はもともと我がバランギ帝国の1都市だったのだが、11年戦争開始前、ガザール州の権力者で、しかも帝国の軍事顧問でもあったオットー・ムスタキがバランギからの独立を提唱し、小規模な内戦がちょうど私が今いる所のミケーレで起きた。
なぜ、オットーが独立を言い始めたのかといえば、もともとこの州だけはさらに40年前にあった世界的規模の戦争中にタイグーンから領地としてバランギに移されたが、その後も折り合いが悪く、早くからタイグーンへの返還要求がされていた。
そこへきて、偶発的に起きた“長距離ミサイルの誤射”によって一気に11年戦争に突入し、戦争終結とともに独立、さらにはタイグーンと我がバランギの一部を占領して領土を広げたのである。
ここまで話せばわかるように、バランギ、ガザール、タイグーンの3つの国は文化的にも似たところが多く、とりわけ、科学力、軍事力に関してはガザールとバランギは同等の力を持っていた。
ランゼロックスTの走行性能は従来の装輪装甲車両を遥かに凌いでいる。
敵の射撃をその高速移動で回避し、一気に敵陣地に突撃するのだ。
「隊長、サイボーグ兵がUターンします」
「テスト走行だったのだろうか?」
「さあ…」
「とにかく、今のデータをすべて司令部へ電送するんだ」
1月後に予定されている大規模な侵攻作戦でどちらが再び大きな打撃を受けることになるだろうか。ガザール攻撃は今までに無い戦闘になるだろう。
少なくとも、サイボーグ兵の部隊だけには会いたくないものだ。
奴らには感情というものが無いから…
激しく発光するランゼロックスTの「顔面」。
一説にはこの部分は投光機でもカメラ、センサーでもなく、バグ26に装備されているものと同系統のCO2レーザーである、と言われるが真偽は定かではない。
出た!一撃必殺の大質量兵器「ロケットクローパンチ」だ!正義の鉄爪が悪逆非道のバランギ軍を叩き潰す。侵略者を許すな!
猛烈な噴射炎を噴き出して飛ぶロケットクローパンチ。その飛行速度は巡航ミサイル並みだ。各爪に備えられた排気ダクトが姿勢制御に使用される。
炸裂するロケットクローパンチ!バランギ軍自慢の大型ホバータンクも一撃でOUTだぜ!
第4話 完