[巻頭前文]

 帝国「バランギ」は2048年5月、地上部隊を中心にした大規模な侵攻作戦を開始した。

 5月6日、国境に近いミケーレに侵入した戦車部隊は翌、5月7日にはガザールのスラグル・トーチカの攻撃に入ろうとしていた……

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オペレーション・ドラゴン(T)

オリジナルストーリー全文

2048年5月5日、軍最高指揮官であるダハリ・サビィーニによってガザール共和国への大侵攻作戦「オペレーション・D」の作戦内容がミーティングルームで説明された。

 我々地上部隊は戦車大隊を主軸に国境近くのミケーレを落とすことになった……

 戦車大隊は5つの中隊に別れ、それぞれに攻撃型装甲車3台、重戦車5台、そしてサイバーヘッドT型の通称“義頭野郎”達の小隊が含まれている。

 まずサイバーヘッド小隊が先鋒となり、その後を装甲車、戦車、一般歩兵が進む。

 サイバーヘッド達はいつものように無言の進撃を続けていた……

「義頭共がポイント11−01に達しました」

「わかった装甲車で地雷原を破壊しろ」

「わかりました!」

義頭回収用重戦車「BASSHORN」(手前)と義頭兵用装甲車「CFV」(奥)。

CFVは義頭輸送専用に開発された無人操縦装甲車。長距離移動の際は義頭兵士はデッキ上にベルトで固定される。写真は下車突撃直前の状態である。

ミケーレ外縁地帯でバランギ軍を待ち受けるガザール陸軍のバグ26戦車部隊。快速、特殊砲弾を備え、決して低性能ではないが、侵攻するバランギの兵器に比べれば旧式の観は否めない。

バグ26の砲塔後部上面に配置された近接レーザー砲。初期生産型には配備されていない場合がある。接近する敵歩兵、軽装甲車両に威力を発揮する。

スタム、主砲用意!」

「はい」

「ポイント00−02へ」

「準備よし」

「撃て!」

 重戦車の閃光が野をかき分けるようにして敵の歩兵や戦車を撃破していく。

「敵は全く主力を出してきませんね」

「いや、ミケーレの市街地に近づけばわからんさ」

「しかし、奴らの兵器は少くとも20年は遅れてますよ」

「そうとも言い切れんぞ、例のランゼロックスのように我々と同レベルの兵器も配備されているんだ、重戦車の1つや2つ、すぐに開発するにちがいない」

「でも、その間に我々はもっと上のマシーンを作れる訳ですよね」

「まあな…」

 我々は自分たちの兵器に関しては他の国には絶対に負けないだけの自信があった。

BASSHORN」。義頭兵士の頭脳部分のみを回収する目的で製造された重戦車。専用マシンハンドを備える。エンジン出力に余力があったため、レールガン搭載試験車両ともなった。車体後部にレールガン用パワープラントを搭載。無人操縦も可能である。

 しかし、私はガザールだけには別の考え方があった。

 元はといえば同じ国だったガザール。その軍事力等はあらゆる部分で共通点が多く、今は20年ほどの違いがあるにせよ、すぐに追いつくのは目に見えているからだ。

「大隊長、義頭達が市街に突入しました」

「よし、本部に報告しろ」

 5月6日午前7時20分、オペレーション・Dの第1目標であるミケーレは、侵攻開始約30分で占領することができた。

 大隊本部が設置されるとすぐに第1の難関スラグル・トーチカの攻撃指令が出された。

 5月7日午前0時、今度は重戦車隊が先頭を切ってトーチカ攻撃を開始した。

「このトーチカは何時間で落とせますかね」

「いや、2〜3日で落とせればいいかもしれんぞ…」

 

バグ26を超至近距離で撃破する「BASSHORN」。

後の建物は19世紀にロシア系住民によって建造されたもの。ミケーレは歴史的に東西の文化の混淆地帯とも言える。

 このスラグル・トーチカでの攻防でこそ、我々が今までに経験したことのない最悪の戦いになるとは、まだ誰も知らない… 

5話  完

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